レコーディングについて

4.しかし結局はエンジニアの腕次第

 以上、見てきたようにPROTOOLSによるレコーディングは非常に簡単で効率的です。しかしこのソフトは編集、アレンジ、ミキシングを行うプラットフォームであって、そのうえで実際に作業にあたるのは人間であるエンジニアです。すると当然、仕上がった楽曲の良し悪しはエンジニアのセンスと技術に左右されてくることになります。
 では、PROTOOLSエンジニアとしてすぐれた技量を持てるようになるためには、どうしたら良いのでしょうか。
 
4.1.アーティストでなければならない
 ミキシングにあたっては、楽曲データを編集して聞き比べて良し悪しを判断するわけですから、当然、音楽の素養がなければ話になりません。それも高いレベルの音楽的センスが求められます。
 それでは、高いレベルの音楽的素養を身につけるには、どうすればよいのでしょうか。
 
4.2.「聴く力」をつける
 何事でも同じですが、高いレベルに達しようと思うならたくさんの練習をし、たくさんの経験を積むしかありません。
 まず考えられるのは、良い曲を、良い音で、なるべくたくさん聴くということです。PROTOOLSエンジニアの仕事は「聴く力」のうえに成り立っています。聴く経験を重ねて、聴く力をきたえましょう。
 そして、「良い曲を、良い音で聴く」ために最適なのがライブ・コンサートです。ハイレベルなパフォーマンスが期待できるコンサートなら、何万円かかろうとも逃さずに聴きに行かせましょう。音の粒立ちは肌で感じるものです。録音では再現されません。ぜひ、できるだけ多くの機会をとらえてライブ・コンサートに出向きましょう。
 
4.3.なにか楽器ができればベター
 PROTOOLSエンジニアは、演奏する音楽家たちと同じ側に立つ「表現者」です。単なる技術屋ではなく、「サウンドクリエイター」という名のアーティストなのです。
 ですから、なにかの楽器、自分の声でもいいのですが、何か表現する方法・手段を持っていた方がいいでしょう。
 
4.4.楽曲を知る・音楽家を知る
 クラシックの演奏家は、多かれ少なかれ研究者でもあります。ゆたかな表現力は、楽譜通りの演奏だけでは出せません。楽曲がどのようなテーマをもち、ストーリーをもっているか、理解し共感することを通して発揮されるものです。そのため演奏家は、作曲者の生涯や個々の作品の背景を熱心に研究します。
 PROTOOLSエンジニアも同じことで、演奏する音楽家たちを深く知り、個々の曲のストーリーやテーマ、メッセージを深く知ったうえで、編集・ミキシングすべきです。そのためには、個々の曲を聴く力だけでなく、音楽家たちの心を知るための「聴く力」、コミュニケーション・スキルも必要になるでしょう。
 
4.5.スクールに通うのもおすすめ
 あまり数多くはありませんが、PROTOOLSを使ったレコーディングが学べる学校があります。大学、短期大学、専門学校などです。それぞれ、電子工学や音響系の専門コースとして開設しています。
 ただ、上にさまざまに書いたように、音楽的素養を高める部分に重点を置いた場で学んだ方がベターでしょう。PROTOOLSは、単なる使い方だけならとても簡単です。身につけるのがむずかしく、時間もかかるのは「音楽的素養を高める部分」です。
 ですから、音楽大学や音楽教室でPROTOOLSを使ったレコーディングが学べるコースを用意しているところをさがすのがいちばんいいかもしれません。
 
4.6.PROTOOLS技術認定試験もある
 一般社団法人・日本音楽スタジオ協会が認定する民間資格として、「PROTOOLS技術認定」というものがあります。
 受験資格は、「高校卒業以上、または同等の学力を有すると認められる者」となっています。
 受験科目は、日本音楽スタジオ協会が発行している『PROTOOLS技術認定試験問題集』からの出題で、「PROTOOLS概要」、「ミキシング」、「シンク・MIDI・ファイル管理」などの項目について、初級と中級に区分された問題が出題されます。テストは四者択一のマークシート方式。受験料は5,000円です。
 大学・短期大学・専門学校に在籍していて、同時に受験する人の人数がある程度多ければ、「団体受験」という形でそれぞれの学校が代表して申し込むことができます。個人の場合は日本音楽スタジオ協会のホームページから受験申請書を請求し、それを記入して送り返す形で申し込みます。
 試験結果は「合否」という形ではなく、技術レベルをA~Eの5ランクで認定した「認定証」、「成績証明書」が発行されます。
 
 ただ、ご覧になっておわかりいただけるでしょうが、「音楽的素養」にはほとんど関係しない資格です。PROTOOLSエンジニアとしての技量を適正に表すものとは、かならずしも言えないようですね。